「今さら?」と言われるのを承知で告白すると、『おっさんずラブ』にハマっている。

うちはテレビがないので(あると見続けちゃうから)、Netflixで配信が始まったこのタイミングで単発版・連続版ともに視聴し、まんまとのめり込んだのである。

ノンケの人でも、環境やちょっとしたきっかけで「そっち」側の人間になることだってある。

特に人恋しい性格で環境が体に浸透してくるのが速いタイプの人は、最初あったはずの抵抗感が数回のポジティブな出来事にあっという間に上書きされて、「コッチもなかなかイイじゃない」となるのかもしれない。

 


 

さて。ツレ彦(旦那)が虫にハマり、あれよあれよと虫業界の仲間入りしていることは何度か日記にも書いたんだけど、ついに虫業界の有名人「メレ山メレ子さん」が主宰する「昆虫大学」というイベントに出ることになった。

私は埼玉県の山間で育って虫にはある程度慣れ親しんでいるものの、アゲハ蝶とシジミ蝶をまとめて「ちょうちょ」と呼ぶような全くの一般人で、つまり虫業界で言われるところの「虫ノンケ」である。

 


 

ツレ彦が「とにかく面白いから!」と言うので行くことにしたのだが、とにかく私は昆虫大学にビビっていた。

いい年の大人のくせに人見知りを自称するのはダサいことだとは分かっているのだけど、私はすでに顔見知り同士で盛り上がっている昆虫業界の集まりに「ハ~イ☆クリコダヨ!」とホイホイ入っていけるほど腹が据わっていない、いまいちカッコ悪い大人なのだ。

 

「虫だらけの場所に行って、もし『イヤだな』と感じてしまったらどうしよう」といった心配もしていた。何人か会っているツレ彦の虫友達の皆さんのことはとても好きだし、詳しい虫の話では盛り上がれなくても一緒に出掛けたりするのは楽しいなと思っていた。

そこにきて、もし「虫業界コワい…」と思うようなことになったら悲しいワと余計な心配をしていたのである。

 

そして私は虫の「お食事タイム」がちょっと苦手である。

虫の方達って、口に入れて噛んだものを一回出して、またモッチャモッチャ噛んで、また出したりするじゃないですか。

いやいや、イイんですよ。お食事って大事ですからね!

でも私はたとえ石原さとみが一度口に入れて咀嚼したマカロンを一回出して、またそれをまたモッチャモッチャ噛み始めたとしても「OMG…!」って思うと思うんですよね。

お食事タイムのドアップ映像にも警戒が必要だ。

 


 

しかしいざ行ってみると、カラフルな物販ブースが立ち並び、活気があって明るい雰囲気。

虫のお友達の皆さんも優しい。

前日までぐずっていたくせに何となく安心してきた私は、「せっかくだから楽しもう」と物販ブースをウロウロ歩き回り、カメムシのバッヂを買った。

タイでご一緒した「カオヤイさん」が、虫のパッケージのお酒を販売しているブースで日本酒を買ってくださり、一杯引っかけたあたりでやや調子が出てくる。

「昆虫食」の提灯が下がっているブースで、ツレ彦とイナゴのグラノーラを購入。

噛む。

そして出す。

そして噛む。

 

私がイナゴを噛んだり出したりしていても、ツレ彦は「OMG…」とは言わない。きっとこの人なら石原さとみが咀嚼中のマカロンを口から出しても文句は言わず、むしろそれを食べられるくらいなのだろう。

虫関係者は寛容なのだ。

虫たちも、毒見のために噛んだり出したりしているのだろうか。

なんとなく慣れてきた私は、さらにセミも食った。

 


 

その後も日本酒を飲み続け、打ち上げにも出させてもらいビールもしこたま飲んだ私は、「ヒアリマスクをご自由にかぶってくださ〜い」とのアナウンスを聞いてこうなった。

私はすっかり、

「虫のこと好きなの?嫌いなの?」

「いや、好きですよ、虫としてはね。でも恋愛感情とかじゃないっす」

という『むしさんずラブ』第一話あたりに足を踏み入れているのだろうか。